
第3章 サイゴン・ツアー
3日目は、ミトーかカントーのメコン・デルタの町へ行く予定でした。 メコン・デルタで、メコン・クルーズを楽しむのが、サイゴン宿泊中の定番観光コースになっているからです。
ところが、朝起きてみると、なにか、もうひとつ、気が進まない。 バスでまた、何時間も揺られて行くことが億劫になってしまったのです。 メコン・クルーズのようなものは、タイで何度か経験済みということもあり、同じようなことのために、貴重な1日を使いたくないという気持ちになってきました。
それから、夜の早いサイゴンの街に、ちょっと退屈していたということもあります。
今夜は、また、別の街で過ごしたい。
そう思うと、矢も楯もたまらず、ガイドブックを広げて、次に行く街を探し始めました。 バスの旅にうんざりしていたので、多少の出費は覚悟の上。飛行機を使うことにしました。 これなら、選択の幅は多くとれます。ハノイでさえ、行けるのでしょうが、それは、また、次回のお楽しみ。
結局、ベトナム中部の古都、フエに行くことにしました。 フエは、サイゴンから飛行機で約1時間の距離。19世紀初頭から1945年まで、ベトナム最後の王朝、阮朝が置かれた街です。 ガイドブックで見るフエの街は、静謐な佇まいの静かな古都という感じです。
ホテルの中の旅行代理店に跳び込み、フエ行きの当日便を探してもらいました。 しかし、1日2便しかないということもあり、2日先まで満席とのこと。 落胆していると、ダナンへ飛び、そこから車でフエまで行くルートもあるということを、代理店の女の子が教えてくれました。
結局、午後3時のダナン行きを予約しました。
その日の午前中は、サイゴン市内の定期観光ツアーに乗りました。 半日のツアーで5USD。なにしろ安いのですが、大型観光バスに、客は、僕とオランダ人のバックパッカーのふたりだけ。 これに、ガイドと運転手がつくのですから、利益が上るわけがありません。観光産業は、まだ、発展途上なのです。
朝の9時から午後1時までの間に10カ所以上も廻るツアーは、ほとんどが走る車窓から眺めるだけのもの。 たまに停車する場所も、ありふれた観光名所というだけで、興味をそそるような所はありません。
ただ、サイゴンの中華街、チョロン地区だけは、東南アジアの華人社会に興味をもっている僕にとっては、見落とすことのできない場所です。
インドネシアとベトナムで暮らす中国人は、現代アジア史の中で、もっとも過酷な受難を体験してきた人たちなのでしょう。 サイゴンでは、この受難の人々の、いまの様子を見てみたい。できうることなら、その健在ぶりを目にしたいと思っていました。
サイゴン市内。やはりチャイナ・タウンは面白い。
結局、このときは、天后廟で10分ほど過ごしただけ。 福建省の人々が熱狂的に信仰する媽祖廟は、苦難の旅を経て、アジアのあちこちに落ち着いた在外華人にとって、異郷の地で、唯一、心安まる場所なのでしょう。 いつものような賑わいを、ここでも見ることができました。
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