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第2話

    コタバルのクイッティオウ.

 旅先で思いがけずおいしいものにめぐり会い、翌日、もう一度探したけど見つからなかった、という経験は、マレーシアのコタバルでもありました。

 コタバルはマレー半島東海岸の北端の街。イスラムの勢力が強く、バスの行き先表示にも、アラビア風の文字が使われていたり、黒のチャドルに身を包み、顔をベールで覆った女性たちが当たり前のように街を歩いている、というようなところ。タイ国境にも近く、マレーシアのディープ・ノースという趣があります。

コタバルのセントラル・マーケット


 こんなコタバルの街にもチャイナタウンはありました。チャイナタウンと言っても、漢字だらけの看板があるわけでもなく、言われなければわからないくらいひっそりとしたチャイナタウンなのですが、たまたま雨宿りで入った小さな店のクイッティオウは絶品でした。


 クイッティオウとは、平べったくて、太い米の麺。見た目も食感も、きし麺によく似ています。タイでは大変ポピュラーな麺ですが、東南アジア全域で、華人たちはよく食べているようです。汁そば(クイッティオウ・ナム)と汁なしそば(クイッティオウ・ヘン)があり、僕が好きなのは、汁なしそばのほう。

 汁なしそばも、ナンプラー(漁醤)で味付けたソース焼きそば風と、野菜を炒め、あんかけでとろみをつけた和え麺風があり、なんと言っても、おいしいのは後者です。コタバルの絶品も、こちらのほう。

 「野菜を炒め、あんかけでとろみをつけた具入り麺」というと、横浜では猫も赤ん坊も食べている「サンマー麺」を連想させますが、「汁なしきし麺に、サンマー麺の具を乗せた麺」と言えば、ほぼ説明がつくでしょう。


 アジアを旅しているときには、よく口にするのですが、なぜ、コタバルのクイッティオウがこれだけ印象に残っているのか・・・。否応なく毎日口に運んでいたマレー料理に食傷していたせいなのかもしれません。マレー料理も嫌いではないのですが、毎日食べるにはやや単調なところもあり、舌が無意識のうちにタイ料理を求めていた、ということなのでしょう。


 翌日同じ店を探したのですが、なぜか見つからず、結局、バスで1時間ほどかけて、タイのスンガイ・コーロクに行き、おいしいタイ料理を思う存分食べたのでした。 

                  
  
タイ側の国境の町、スンガイ・コーロク。イスラム色が濃い

             

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