旅先では、いろいろな所で、いろいろなものを食べるのですが、生涯忘れられない味というものが、人それぞれにあるのだろうと思います。ひとり旅の多かった僕は、「豪華レストランで満漢全席」のような機会を持つことはなかったけど、あちこちのソーイやロロンの、道いっぱいに広がる屋台では、ずいぶんおいしいものにめぐり会ってきたのです。
その中で、特に印象に残っているのが、トムヤムクン味のラクサ。ラクサとはマレー半島でポピュラーな米の麺のこと。見た目や食感は、うどんによく似ています。鶏や豚ではなく、香辛料で出汁をとっているのが特徴なのでしょう。
クアラ・ルンプールのチャイナタウン
クアラ・ルンプールに着くと、荷物を部屋に放り投げ、街に跳びだしました。カンカン照りの中、アラビアン・ナイトのような街の中を何時間も歩き続け、チャイナ・タウンの雑踏にたどり着いた頃には、身も心も疲れ果てて、汗だくに・・・。倒れるように座り込んだ屋台で、偶然出会ったのが、この、トムヤムクン・ベースのラクサだったのです。
酸っぱくて辛いスープが身体中に染みわたり、汗がどっと噴き出すと、たまった疲れが滝のような汗といっしょに蒸発し、再び街に向かって歩き出す元気が湧いてきたのです。
翌日、もう一度、この屋台を探したけど、雑踏の中に紛れ込み、2度と見つけることができませんでした。
![]() トップ |