【マユ島行き】
汕頭(すわとう)2日目の朝、フェリーでマユ島へ渡りました。フェリー乗り場から20分ぐらいの距離にある小さな島で、天后廟を奉っています。午前中に2〜3本もあるフェリーは、平日でも参観者で常に満員状態だとか・・・。僕が乗った船も、中年から初老にかけての女性陣で、むんむんするほどのかしましさ。 その中に一人、若い女の子がいて、この子の顔は、僕の友人の中国系タイ人の女性にそっくり。彼女もまた潮州系なので、つまりこれが典型的な潮州顔なのかと、変に納得。
島に降りた乗客たちは、そのまま小高い丘の上にある天后廟に向かい、持参したお参りセットを広げて、早速お祈りを捧げています。香港でも東南アジアでも、中国人がいるところでは、常にお馴染みの光景です。僕自身も、形ばかりのお参りを済ませると、島の中を歩き始めました。
香港や台湾、東南アジアの華人世界ではお馴染みの天后廟の風景
マユ島はほんとうに小さな島で、香港の長州島よりもずっと小さく、横浜近辺で言えば、横須賀沖の猿島ぐらい。日本統治時代に入植が始まったということで、島の歴史は浅いのですが、現在は小学校も幼稚園も整備されています。それでも人口は、せいぜい数百の単位。島民の大半は漁業に従事しています。海水浴場もある牧歌的な島ですが、汕頭市とその対岸の潮ヤン市を結ぶ海湾大橋の基脚がかかっているため、長州島のような離島感覚は望めません。
家々の外壁は、白い漆喰で塗られていて、開け放れた扉には、涼し気な簾がかかっています。扉の両側には、「春光明媚満堂華」などと書かれた淡い桃色の紙が貼ってあったりして、いかにも南中国といった風情。
島内の食堂で昼食をとって、フェリー乗り場に向かったら、次の船はなんと2時間後。それでも、みんな待合室にぞくぞくと集まってきます。そのうち、誰かが交渉を始めたら、あっさりとフェリーを出してくれました。
【街角のパフォーマンス】 タクシーに乗り、メーターを倒せ倒さないで、運転手と無言の激しい口論に。お互い静寂を保ったまま、頭に血が昇りつめるまで、ジェスチャーで激しく言い争い、結局は、車を降りるはめに・・・。放り出されたところで、奇妙なパフォーマンスに遭遇しました。
街角の一画に、即製の小屋のようなものが出現しています。竹の柱を組み、ビニールのシートをかぶせた程度のものですが、赤と金色の派手な垂れ幕で、目一杯華やかさを演出している。この中で、赤いマントを羽織った7〜8人の中年の男たちが、各自の祖先に祈りを捧げているのです。
祈りが終わると、ガムランのような打楽器に合わせて踊り始めました。踊るといっても、ただ、打楽器のリズムに合わせて激しく跳ね回るだけ。
顔には、はっきりとわかるくらいの化粧をしています。なにかの儀式なのですが、その意味がわかりません。全員が、中年から初老にかけての男性というのが、不可解な感じです。
やがて、金色のマントをつけた少年(美少年!)が現れると、男たちは、この少年を囲むように、相変わらず激しく跳びはね、かけずり廻ります。単調な動作の繰り返しも、その激しさで、徐々に見る者の気持ちを昂揚させてきました。小屋の周囲には、あっという間に黒山の人だかり。外国人が珍しいのか、そのうち主催者側が、僕のところに椅子とミネラル・ウォーターまで持って来てくれました。
不思議なパフォーマンス
20分ぐらいのパフォーマンスは、突然終了すると、男たちは再び祖先に向かって祈り始めました。後ろで待機していた、息子ぐらいの年齢の若者たちが祈りの列に加わります。元服のような儀式なのでしょうか。それにしては、金色のマントを着けた美少年の意味がよくわかりません。いずれにしても、タクシーの運転手との口論から、不思議なパフォーマンスに遭遇し、思わぬ拾いものをしたわけです。(つづく)
 
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