その5
【珠海から広州へ】
マカオから中国へと、国境を越えました。中国側の国境の街は珠海。深センに対するマカオ側の回答、と表現すれば、この街の様子がおよそ説明できるかもしれません。 香港に隣接する深センも、マカオのお隣り、珠海も、相変わらず忙しく、活気に満ちた経済特区の街。時間の流れが止まったかのようなマカオから、国境を越え、珠海に足を踏み入れた瞬間、体中に活力がわき上がってきました。
ここから、ミニバスで広州へ向かいます。大きな手荷物は、2元払って後部の収納スペースに預けなければいけないのですが、預けろ預けないで客と運転手との間で激しい口論が始まりました。中国に入ったのです。
珠海から広州まで3時間。道路は完璧に整備され、バスの旅は快適でした。車窓から眺める風景は、とにもかくにも豊かになった中国です。古いレンガ造の小さな住宅は大きな石造りの邸宅に建てかわり、横浜あたりのサラリーマンでは、一生働いても手に入らないような立派な家が、国道沿いのあちこちに見ることができます。前回、福建省を訪れたときも、同じような光景を目にしました。泉州近郊の漁村の発展ぶりに目を見張り、経済開放の恩恵が、沿岸部の住民を確実に潤していることを知りました。
【汕頭へ】
オールド汕頭の中心部。古い港町の風情溢れる魅力的な街。
広州から汕頭(すわとう)まで、飛行機で1時間足らず。それでも、空港に降り立った瞬間、同じ広東省にありながら、このふたつの街の、気候の違いを感じました。広州はTシャツ姿でも蒸し暑いくらい。横浜で言えば、6月上旬ぐらいの感覚でしょうか? 汕頭は、まだ、春の爽やかさ。日本と同じくらいの気温です。半ズボンにTシャツでは少し早いかなという感じ。
汕頭あたりに来ると、英語はもう完全に通じません。飛行機の中で決めていた「新華酒店」というホテルの名前を紙に書き、民航バスの運転手に見せました。最初はあやふやな表情。誰かになにか言われて、「まあ、乗れや」というような仕草をしてくれました。
空港は、正確には汕頭の隣町、澄海市にあります。汕頭の中心までは、30分ぐらい。市内に近づくにつれ、高層ビルの群が彼方に見えて来ます。初めて中国を訪れた1昨年のことを思い出しました。厦門(アモイ)の空港から街に向かうとき、やはり彼方に見える高層ビルの連なりに驚愕を覚えたものでした。
賑やかな通りのどこかで、バスから放り出されました。民航バスの終点に着いたのでしょう。目指すホテルは、まだ先のよう。あれこれ考える暇もなく、誰かがやって来て、僕の荷物をミニバスの中に運び込もうとしました。ホテルの名前を書いた紙を見せると、だいじょうぶだとうなずきます。
車内に乗り込んでも、発車する様子がありません。満員になるのを待っているのです。案の定、女の子二人がしびれを切らして降りようとしました。そして、料金を返せ返さないで、またいつもの口論が始まります。
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