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その3


【マカオ行き】

 上環のフェリーターミナルからマカオに向かいました。空はどんよりと曇り、今にも降り出しそう。船内ではリー・リンチェイのカンフー映画が流れています。

 出航してすぐに雨が降り始めました。始めはしとしとと、やがてバケツをひっくり返したようなドシャぶりに。途中から、窓の外がなにも見えなくなるほどの雨量です。


 マカオでは2泊したのですが、着いた当日は雨のため、ほとんど歩き回ることができませんでした。香港から、ちょっと重たいものを引きずってきたので、部屋に一人で閉じこもっているのは、気持ちのうえでかなり辛い。小降りになったのを見はからい、街に繰り出したのですが、途中で再び、どしゃぶりに。たまたま見つけたジョルダーニョの店で傘を買いました。
【※この傘はいまでも愛用しています。おかげで、雨が降るたびにマカオを思い出しています】。


 ちょっと歩いただけでも、マカオは魅力的な街だということがわかります。香港のような華やかさ、ダイナミズムには欠けるとしても、肩を張らず、等身大のまま歩き回れる気楽さと、古いヨーロッパとアジアが混じりあった不思議な雰囲気がある。 「レイド・バック」という苔の生えたような言葉を思い出しました。


ヨーロッパの裏通りを思わせるマカオの街。坂が多いのが特徴。



  夜は、たまたま見つけたタイ料理店で食事をとりました。広東人の口に合わせたのか、味は淡泊で、 東京や横浜に数多あるタイ料理店から比べると、やや物足りません。隣のテーブルでは、イギリス人のビシネスマン風二人が、 缶ビールをしきりにおかわりしながら、まじめな顔で仕事の話を続けてる。料理を注文するわけでもなく、 タイ料理店でただ缶ビールを飲み続けるというのも、ちょっと間抜けな感じ。



 その後、カジノで有名なリスボア・ホテルに行きました。 カジノを覗いてみようかとも思ったのですが、半ズボンにTシャツ、髪は雨に濡れたままという状態で、今回は断念。 代わりに、グランド・フロアのショッピング・アーケード街を覗いたのですが、ここは街娼たちのメイン・ストリートです。 皆さん、それぞれに大変な美人ではあるのですが、その異様な雰囲気に気後れし、早々にホテルに帰りました。



 思えば、この頃が、気持ちの上では最低の時期でした。たとえ10日間程度でも、ひとりで海外を旅していると、 体調以上に精神状態の維持に気を使わなければなりません。



 もっとも、いわゆるlow-keyな旅というのも、 それはそれで味わい深いものだということが、わかったような気がします。傘をさしてあちこち歩き回ったのは、 今回が初めてなのですが、それはそれで、結構楽しかったのです。



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